【特集インタビュー】奈良クラブ・矢部次郎理事長「サッカーやスポーツの価値を上げるということに取り組んでいきたい」

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22
07月
2016

奈良クラブ公式サイト

奈良県初のJリーグクラブを目指し、現在JFLに所属している奈良クラブ。今年の2月には、これまでゼネラルマネージャーを務めていた矢部次郎氏が、理事長を職を兼任することが発表された。理事長就任の際に矢部氏は「クラブとは様々な人々が集い成長する場所。その中で『奈良クラブらしい』方向性を示し進めていくことが私の仕事です」と語り、「勝ち負けよりも大切なものがある」と奈良クラブのコンセプトについてを説明した。では矢部氏は今の奈良クラブの現状をどう捉えているのか。2016年の上半期が終わった今、現在のクラブの実情や今後のビジョンについて話を聞いた。

-JFLに参入してから1年半が経ちました。矢部さんは今のチームをどう捉えている?
矢部次郎理事長(以下、矢部理事):今季はここまで良い成績を残せているわけではないですが、地域の方が昨年と変わらないぐらいの声援を送ってくれています。温かいチーム作りはできていると思います。ここまでの試合で毎試合1500人ぐらいの来場者数はキープできています。ここに競技成績がついてきて、魅力的なサッカーを見せることができたら、もっと多くのサポーターがスタジアムへ足を運んでくれると感じています。

 

 

-地域の方々からのサポート体制も整っている?
矢部理事:試合の日だけでなく日々の生活の部分から、サポーターや選手を応援してくださる方々がすごく温かくしてくださっていて、Jリーグのクラブから来る選手たちがびっくりするぐらいのサポート体制ができています。選手が行くと割引してくれるお店がたくさんあって、飲食店や美容院、お風呂屋さん、フィットネスジムなど多くの地域の方々が選手をサポートしてくれています。勝ち負けよりも大切なことがあるという話をよくしますが、「奈良で頑張っていくなら応援する」と応援してくださる方々がいっぱい増えてきているのを感じています。

 

 

-地域リーグに所属していた時との違いは?
矢部理事:そんなに大きく変わった部分はないと思います。『奈良クラブ』という名前の知名度が広がって、スポンサー活動などをしていたら幹部の方につなげてもらいやすくなりました。クラブの運営スタッフを増員したことも、クラブが少しずつ大きくなってきている要因のひとつになっていると思います。

 

 

-クラブの運営面は順調に成長している?
矢部理事:順調とは言えないです。身の丈と言いますが、夢も持たなければいけない。お金が余るのなら「もっとチームを強化しろ」と言われる世界です。今は背伸びをしながら手の届く範囲を広げていっているという感じです。J3での運営費は約1億5千万円、J2に上がるなら5億円ぐらいのお金は必要になってきます。J2に残留しようと思えばもっと必要で、10億円~20億円以上なければJ1では戦えない。まだまだ今の10倍以上のお金が必要になってくるので、安心しているということは絶対にないです。

 

 

-以前のインタビューで「奈良にはお金を払ってスポーツを見に行く習慣がまだまだ根付いていないのでそこを根付かせたい」と話しておられましたが?
矢部理事:昨年から観戦が有料になりましたが、サポーターの数は一昨年に比べて少しずつ増えています。成績以外の部分では昨年と変わらないぐらいの数字は残せています。チームの為と言って、前売りで買っていただいた方がお得なのに、わざわざ当日券を購入してくださる方々もいます。知り合いの方に「今度試合を見に行くよ」と言われて招待券を用意しようとしたら「なんのために応援に行くと思ってるんだ」と逆に怒られることもありました。競技成績以外の部分で年間3万人の動員が必要などという部分は認知されてきているのかなと思います。

 

 

-近頃は市内だけでなく、県内での認知度も上がっていると思いますが?
矢部理事:県内に奈良クラブのポスターを掲示してくれているところが1000件以上ありますが、一軒ずつチェックをして、ポスターが新しくなれば貼り直すなどの作業を、クラブの運営スタッフだけでなく、選手やサポーターも一緒になって行っています。地道な活動をしっかりすることによって知名度は上がっています。現在、ホームスタジアムとして使用している鴻ノ池陸上競技場は、奈良県の北の方にあるので、「南部に住んでいる方々には馴染みがない」、「試合を見に行くには遠い」といった問題がありましたが、橿原市でスクールを開校したり、自治体と協力してイベントを行ったりして県内での認知度を上げています。

 

 

-今年の観客動員数の目標は?
矢部理事:昨年の最多入場者数は約3300人でした。それは絶対に超えたいと思います。去年もそうでしたが、数字や結果を残せているときや、ゴンさん(アスルクラロ沼津所属のFW中山雅史)効果のあるときは入場者数が多かったです。終盤にかけて盛り上がりを見せることができました。今年も開幕時から自治体と協力して観客動員は以上の残せてきているので、これから終盤にかけてもっと増やしていきたいと思います。

 

 

-今年は競技成績の部分で苦労している部分もある?
矢部理事:組織やチームとして通らなければいけない道だと思います。今年は本当に良い補強ができて、良い選手たちがチームに加わってくれました。良い選手が加わってくれたことで、誰かがなんとかしてくれるという雰囲気も出てきてしまい、自分がなんとかしなければいけないという気持ちが薄れてしまったのかなと思います。それは奈良クラブの温かさが緩さにつながっていると思われることもありますが、そこはサッカー選手として、一個人として、一皮むけなければいけない部分だと思います。これまでもうまくいってきたばかりではないので、泥臭くてもいいので良い方向に進んで、その壁を乗り越えることができた選手たちの集まりになればいいと思います。

 

 

-ここ数年、苦しんだ次の年に大きな結果が出ているが?
矢部理事:JFLへの加入同期である、FC大阪さんや流経大ドラゴンズさんは今年、好調をキープしています。昨年は自分たちの方が順位は上だったが、今年は逆になりました。昨年の悔しさをバネにして、今年取り組んでいる結果が出ていると思います。そういう意味では自分たちももっと危機感を持ってシーズンを過ごさないといけないと思いますし、J3、J2、J1といった高い目標もしっかりと見据えていかなければいけないです。このクラブで結果を残して昇格していくことも大事ですが、個人として活躍してビッグオファーがくるぐらいの選手が出てきてもいいと思います。

 

 

-鴻ノ池陸上競技場のピッチや環境もすごく良くなっていますね
矢部理事:地域リーグのときからずっと訴え続けてきて、地域リーグにホーム&アウェイという概念が無い頃から、ホーム試合は奈良で開催するということにこだわってきました。本当にボコボコのピッチの中での試合ということもありました。こちらの要望を叶えてもらうためには、順位や成績を残していかなければいけないという難しい部分もありましたが、奈良市はしっかりと訴えに対して答えをだしてくれました。奈良県も橿原公苑陸上競技場の芝の改修に予算を取ってくれて、この秋に着工してくれることになっています。県や市のサッカー環境も変わってきていて、そこに自分たちも率先して加わっていこうと思っています。良い環境を子どもたちに残していかなければいけないと考えていますし、将来はサッカースタジアムが奈良にできればと考えています。

 

 

-鴻ノ池陸上競技場は本当に綺麗になりましたね
矢部理事:自分たちの力だけでなく、自治体や色々な方々のサポートがあってここまでくることができました。JFLの試合でアウェイに行くこともありますが、鴻ノ池陸上競技場より良いと思う芝はないのではと思います。これまでは自分たちのホームに来てもらうことが本当に申し訳ないと思うときもありました。勝敗に関わるようなイレギュラーなことが起こることもあって、本当に進歩したなと思います。ロッカールームも奈良クラブのホームスタジアムということを意識して、奈良クラブカラーに整備していただきました。こちらからはそんな要望は出していなくて、担当課の方に初めて見せていただいた時のサプライズは忘れられません。

 

 

-矢部さんの今後の目標は?
矢部理事:Jリーグという目標はもちろんですが、サッカーやスポーツの価値を上げるということに取り組んでいきたいです。奈良にスポーツをするために来て、生活をすれば豊かになれるという環境が作れればいいと思います。奈良クラブの選手たちは現在、色々な企業で仕事をしていますが、「現役を引退しても、ここの職場に残っていいよ」と言ってくださる企業ばかりです。むしろ「奈良クラブの選手今余っていないの?」と声を懸けてくださる企業もあります。育成のコーチなどの就職を紹介することもできていて、「奈良クラブに関わる人たちは忠誠心が高くて、仕事もしっかりと頑張ってくれる」とお褒めの言葉をいただきます。

 

 

-地域とチームで良いサイクルができてきているということですね
矢部理事:今はトップチームの選手たちが企業に働きに出ているが、いずれJリーグに上がれば全員プロ生活になる可能性があります。その時はセカンドチームで県リーグに所属している奈良クラブソシオスの彼らがその役割を担っていければと思います。あとは育成組織の子どもたちを企業に紹介できれば、奈良クラブに携わってくださった方々や奈良にスポーツをするためにこられた方々が、奈良の企業で仕事に就くことができればと思います。育成年代に現在300人ぐらいの子どもたちが所属していて、その子たちが全員トップチームに上がることはないです。トップに上がれない子どもたちの方が多いと思いますし、その子たちを見放すわけにはいきません。奈良県は県内就業率がワースト1と言われていて、県外就業率がナンバー1となっています。自分たちの活動がその問題を改善するためのひとつになると思いますし、サイクルを作っていきたいと思います。

 

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