【コラム】大分を“降格”と“昇格”に導いた男・林 丈統

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23
11月
2012

「サッカーはドラマだ」そう言わざる得ない舞台となったのは、今シーズンから導入されたJ1昇格プレーオフである。そして、今回その「昇格プレーオフ」という初舞台の主役は、まぎれもなく大分トリニ-タの林丈統だ。

J1昇格プレーオフ決勝・ジェフユナイテッド千葉対大分トリニ-タが23日、国立競技場にて小雨が降る中行われた。大分は、前半からPO決勝進出の立役者であるFW森島を中心に攻めるが、決定力を欠きゴールを奪えない。後半に入ると、千葉に攻撃リズムが生まれ、大分は守りに追われる時間が続いた。

0-0で終われば千葉の昇格が決まってしまう状況で、大分は後半28分にFW林を投入。同41分に、DFラインの裏に抜け出した林がGKの動きをしっかり見て、ループシュートで先制点を決めた。これが決勝点となり、大分は4年振りのJ1復帰を果たした。

今夏、タイプレミアリーグのサーサナFCから移籍してきた林は、「大分トリニータがJ1に復帰するために自分の力と経験をうまく出して、チームに貢献できれば」と入団時にコメントしている。その言葉を、最高の舞台でしっかりと体現した。

劇的なゴールで一躍ヒ-ローとなった彼であるが、胸中は複雑だった。

1999年、高卒で当時のジェフ市原に入団した林は、2003年より監督に就任した元日本代表オシム監督の教え子“オシムチルドレン”でもある。

「オシムの考えて走るサッカー」という“財産”を胸に抱え、出場機会を求め7年間プレーしたジェフを後にした。J1の2チーム(京都、磐田)を渡り歩き、再び千葉に舞い戻ったが、2011年シーズン終了後に千葉から戦力外通告を受けた。結果、2012年はタイに渡ったが、シーズン途中に退団し、大分に入団。その大分で、古巣でありいわば故郷のようなチームでもある千葉の昇格の道を断ち切ることとなった。

それは、勝負の世界は決して甘くないことを象徴したようなシーンだった。

それだけではない。林は、自らのゴールで大分をJ2に“突き落とした”経験を持つ。

2009年シーズン、引き分け以下ででJ2への降格が決まってしまう当時J1の大分は、並みならぬ意気込みでアウェイの京都戦に臨んだ。1-0でリードしていた大分に対し、1-1となる同点弾を決め、残留の道を断ち切ったのが当時京都でプレーしていた林である。

大分のサポーターに強烈なインパクトを残してしまった林は、大分の一員になることに多少なりとも思うことがあったはずだ。しかも入団後ケガもあって、5試合(全て途中出場)に留まり、ノーゴール。大分のプレーオフ進出に貢献したとは言い難い。

そんな思いがあったのだろう。試合終了後、1人サポーター席に向かい頭を下げた。入団時とは異なり、一際輝いている彼を、歓喜に沸くサポーターは涙と温かい拍手で迎えた。

林が、本当の意味で“トリニ-タイレブン”になれた瞬間だった。

大分の田坂監督が「昇格POは、リーグ6位のチームがJ1に上がることができるメリットがあるが、負ければただの6位」とコメントしたように、今季から始まったこの制度は「デッド・オア・アライブ」の一発勝負。賛否両論あるものの、観客動員数(2万7433人)からも盛り上がったのは、間違いない。

来年のPOでは、どんなドラマが繰り広げられるのか。そして、どんなヒーローが生まれるのか。

今からでも、ワクワクしてしまうのは私だけだろうか。

 

(谷口 こういち

 

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