INAC神戸が“勝てない”監督を選んだ理由

(写真:練習後に高瀬選手と話をする前田監督) ■男子サッカー関係者も驚いた後任人事 常勝軍団のINAC神戸。昨年は、リーグ戦3連覇、カップ戦、皇后杯、モブキャスト杯を制し、史上初の4冠を達成した。 優勝の立役者でもあった石原監督に、INACは留任を要請したが、本人は「次のステップに行きたい」と、アメリカリーグでの指導を希望。勇退という形で、sky Blue FCのコーチに就任した。 驚いたのが、後任人事。女子サッカーの指導は初となる、J2鳥取の前監督だった前田浩二氏に決まった。 女子サッカー界は未経験というだけでなく、前田新監督は成績に関して「いわくつき」でもある。アビスパ福岡の監督時代(2012年)にシーズン途中から解任されるまでの期間と、昨シーズン途中より監督に就任したガイナーレ鳥取で、26試合も勝利できていなかったのだ。J2・JFLの入れ替え戦でもカマタマーレ讃岐に敗戦し、鳥取をJ3に降格させてしまった。采配には疑問視される点が多く、ファンのみならず、主力選手からも不満が噴出してしまうなど、監督としてのキャリアは、決して輝かしいものではない。 ■盛り上がりに欠けるなでしこリーグにとって・・・ 近年はINACの一強時代が続いたことで、「応援に行かなくても勝てる」というファンが出てきてしまい、観客動員数も年々減少していった。そのことが、なでしこリーグ全体にまで波及し、盛り上がりに欠けてしまうという問題も出てきていた。 そんな中での前田氏の監督就任。ネット上などでは、「リーグ全体のことを考えての、わざとの後任人事か」と、まことしやかにささやかれるほど予想外の人事であった。 加えて、チームからは昨年の主将・川澄、リーグ得点王のゴーベル・ヤネズ(両選手ともに期限付き)、なでしこジャパン不動の右サイドバックの近賀が海外に移籍。大幅な戦力ダウンも心配されていた。   (PR)埼玉スタジアム周辺の予約駐車場   ■開幕2連敗。しかし、チーム関係者からは予想外の声 事実、INACはリーグ戦初の開幕2連敗を喫してしまう。 監督自身、不名誉な記録を28試合に伸ばし、クラブ的にも暗い雰囲気があるのではと思われたのだが、クラブ関係者は意外なことを口にした。 「今年のINACは、雰囲気がとても良い。若手が伸び伸びしている」「ベテラン選手が若手に歩み寄って、より積極的に話しかけるようになった」 その理由の一つが、前田監督にあるというのだ。前田監督はベテランや若手、レギュラー組やサブ組関係なく、選手一人一人に接し、アドバイスをしたり、談笑したりする。実際に、選手たちからも、成績が低迷しているにもかかわらず「選手一人一人をしっかりと見てくれている」と上々の評判だ。 ■昨年と今年のINACの大きな違い 昨年までのINACの練習を見たことがある方はご存じであろうが、レギュラー組とサブ組が、はっきりと別れた状態で、終始トレーニングが行われていた。なでしこジャパンに名を連ねる偉大な先輩に、後輩が遠慮している部分も多く見られ、固定されたレギュラー組に対して、サブ組のほうはモチベーションが上げにくいであろう場面もあった。 一方の今年は、クールダウンのランニングを選手全員で一緒に走るなど、今までになかった光景がある。 今年、「ベテランと若手の融合」をINACは掲げているが、その一手を担っているのが、前田監督だ。 前田監督本人も監督としてのモットーは、選手に対する「目配り 気配り 心配り」で、男子の監督時代から心掛けているという。   (PR)ヤンマースタジアム長居周辺の予約駐車場   ■監督オファーの理由は・・・ チーム関係者も「並々ならぬ決意をしている」「気配りができる方なので、男子より女子相手のほうが向いているのではないか」と、監督を信頼する理由を明かす。 「若手の育成」がクラブの方針であり、「女子の若手育成に期待ができる」という点が、前田氏への監督就任のオファーに至った理由の一つであったようだ。   INACの文会長も、「3敗ぐらいはしてもいい。若手が試合でチャレンジし、経験を積んでくれれば」と、敗戦に対しての猶予をある程度見ている。 チーム関係者も、「このチームは、結成からどんどん良くなっていっている。結果も付いてくる」と、10代の選手がチームの半数を占める「新生INAC」に期待を寄せる。 「今までとは違う強さ」を見せるINAC神戸のカギを握るのは、まぎれもなく、不名誉な記録を止める前田浩二監督だ。 ※アビスパ福岡時代の成績について誤りがあった為、一部加筆修正致しました。申し訳ございません。 (取材・文:谷口こういち)

【インタビュー】「大迫 半端ないって」の元滝二主将・中西隆裕

第87回全国高校サッカー選手権大会準々決勝・滝川第二高校対鹿児島城西高校の、試合後のロッカールームで、高校サッカー界の歴史に残るといわれる名言がうまれた。 (参考動画: https://www.youtube.com/watch?v=B-uRb9Ba9uA) 大会で10得点を挙げ、得点王に輝いた鹿児島城西のFW大迫勇也(現・鹿島)と対峙した、滝川第二のDF中西隆裕(現・関西大)が涙ながらに放った言葉「大迫 半端ないって」。高校サッカーの“爽やかさ”が凝縮されたようなその言葉は、日本中のサッカーファンの脳裏に焼き付いた。 あれから4年。中西は関西大学を卒業すると同時に、サッカーを引退する。4月から大手銀行に営業職として入社する彼の「今」に迫る。 ■サッカー引退理由 -JFA U-18選抜にも選ばれた中西さんが「大学を卒業すればサッカーを続けない」と決意したのは? 中西隆裕(以下、中西):大学までサッカーをずっとやってきたんですが、関大のトップチームでも試合になかなか出られなかったので、自分の将来を冷静に考えた時に、サッカーを続けるか、就職活動をして会社員になるかという選択肢の中で、自分は会社員としてのほうがやっていけるんやろうなと思いました。   -プロサッカー選手の引退の平均年齢は26歳と言われていますが、悔いはないですか? 中西:これからもサッカーを続けて引退後に就職するという形ではなく、大学でサッカーをやりきって大学で辞めようと決めたんで、悔いはないですね。   -それはいつですか? 中西:大学2年のうちには将来について考え始めて、3年時にはサッカー部から「サッカーを続けるか、就活に専念するか」という話がありました。そこで「就職します」と話しました。   -仕事をしながら、地域リーグなどの選手としてサッカーを続けようという気持ちは? 中西:それはなかったですね。セレクションも受けなかったです。   【PR】大迫半端ないってTシャツが入荷!   ■名言「大迫 半端ないって」の誕生秘話 -高校時代のことを聞かせて下さい。滝二時代といえば、「大迫 半端ないって」という名言ですね。その言葉が出た時の気持ちを教えていただけますか? 中西:あの時は、鹿児島城西に準々決勝で負けて、ロッカーに戻ってきたころにはほとんどの選手が泣いていたんですが、僕らのチームってそもそもそんなしんみりするタイプじゃなくて、「どんな時も笑っていこう」という感じでした。 僕自身も泣いていたんですけど、「泣くのはなんかちゃうな」とふと思いました。それで「もう泣かんとこう」って、みんなに声掛けたんです。その後にテレビカメラが入ってきて、和ませようという気持ちもあって、本音ではありますが、あの言葉が出たんですね(笑)。   -You tube等の動画の再生回数が合計すると450万回を超えています。反響には驚かれたんじゃないんですか? 中西:かなりびっくりしましたね。最初は全く気にも留めてなかったんですが、Youtube の再生回数もどんどん上がっていっていて。大学入学した時も「『大迫半端ない』の人じゃない?」って声掛けられました(笑)。サッカー部の飲み会とかで先輩に、「大迫のところ、おれの名前に換えて言って」なんて言われてやらされたりしましたね(笑)。